アスベスト(石綿)とは?
アスベストとは別名、石綿(せきめん、いしわた)と呼ばれる天然の鉱石繊維です。綿のように柔らかい繊維で、代表的なものに『白石綿』(クリソタイル)、『青石綿』(クロシドライト)、『茶石綿』(アモサイト)の3種類があります。
耐火性や断熱性、防音性、耐摩耗性に優れ、腐ることも無く、紡いで織るなどの加工もでき、しかも安価で手に入れる事ができる事もあって、当初は「魔法の鉱物」・「奇跡の鉱物」などと呼ばれもてはやされていました。
特に使用量が多かったのが建物などを建てる際の建材で輸入されてきたアスベストの90%以上が様々な建材に使われていました。
アスベストが持つ危険性
アスベストは髪の毛1本ほどの太さに約5,000本も含まれるほど細い繊維で、1本1本を肉眼で確認することは不可能です。アスベストを吸入すると機関から気管支、更にはハイの一番奥の肺胞にまで入り込み、肺に沈着したまま長年に渡り残留します。それが原因となって、深刻な健康被害を引き起こす可能性があるのです。
アスベストによって引き起こされる健康被害には『悪性中皮腫(ガンの一種)』、『肺ガン』、『アスベスト肺』、『良性石綿胸膜炎』、『びまん性胸膜炎肥厚』の5つがあると言われています。中でも悪性中皮腫の原因はアスベストと考えて間違いありません。アスベストによる健康被害は、ある程度進行するまで無症状な事が多く、その潜伏期間は、肺がん、悪性中皮腫の場合は平均で40年と言われています。アスベストは、ココまでなら吸入しても大丈夫という基準値はありません。吸入した量と、吸入した時間と、吸入してから現在までの期間で発症確率は決まってきます。発症には個人差も大きく、現在もその全ては解明されていません。
適切な処理を行わなわずにアスベストが含有されている建材を使用した建物の解体を行うと周囲にアスベストが飛散し、飛散したアスベストを人々が吸入すると多大な健康被害が起きます。一度吸入したアスベストは自然分解することは無いので、株式会社ユーアイではアスベスト除去の際は徹底した飛散防止を行っています。
アスベスト建材が使われていた時期
アスベストの規制は段階的に行われて来ました。1975年に特定化学物質等障害予防規則の改正により、ロックウールに含有率が5%以上のアスベストを吹き付ける作業にて労働者を従事させてはならないという趣旨の法律が定められました。
アスベストの含有率が5%以下のものは適用除外になっていたが、1990年までの建物を分析すると十数%のアスベストが検出されたのが現状でした。成形板へのアスベストの含有が原則禁止になったのは2004年10月でそれまでもアスベスト建材は製造されていました。
しかし、化学プラントなど代替の難しい用途や関連業界の要請によって、現在でも使用が認められているものもあります。アスベストの全面禁止は今後の課題となっています。
アスベストが使われている建材
こちらではアスベストが使われている可能性のある代表的な建材と含有の時期をご紹介します。
吹き付けアスベスト
製造時期は1959~75年頃。アスベストにセメントを混ぜたものを噴射器で鉄骨・鉄筋造の梁や柱、天井、壁に吹き付けたもの。青石綿、茶石綿、白石綿の吹付けがあり、アスベストの含有率は約50~70%と言われています。
吹き付けロックウール
アスベストの含有の可能性がある時期は1961~90年頃。時期によって異なるがアスベストの含有量は3~30%と言われています。
ひる石、パーライト、砂壁状吹き付け
含有の可能性がある時期は1965~89年頃。
ひる石吹き付け
ひる石吹き付けは耐火、吸音、断熱などに効果があり、保育園や学校によく使われています。アスベストを使用している場合の含有量は約5~40%と言われ、製造は1989年頃までです。
パーライト吹き付け
パーライト吹き付けは主に天井や壁の塗装などに使われ、1967~87年頃までのものはアスベスト含有の可能性があります。
砂壁状吹き付け
砂壁に似たザラザラとした吹き付けで壁などに使われています。製造時期や含有量は不明となっています。
保温材
アスベストを含有する保温材や耐火被覆板のアスベストは数%~100%近くまで様々です。特殊な利用を除いて、保温材は1980年頃、耐火被覆板は一部00年頃まで製造されていました。
耐火被覆板
吹き付けアスベスト同様、耐火目的で鉄骨などに貼り付けて使用される板状の建材です。アスベストの含有量は数%~70%程です。1955~2000年まで製造されていました。
保温材
板状、筒状、布団状、紐状、水練りなど、妖刀に合わせて利用できるよう、様々な種類があります。アスベストの含有量は数%~100%ほどで、主に工業・科学施設、ボイラー、空調設備で使用されています。1914~80年まで製造されていました。
成形板
波型スレート
断熱性があり製造も簡単な為、日本では1955~2004年まで使用されていました。アスベスト含有量は数%~15%程度で工場や駅などの屋根によく使われています。
住宅屋根用化粧スレート
住宅屋根用化粧スレートはアスベストを入れると強度が上がるため、重量の3~15%程度はアスベストが含有されています。アスベストが含有されていた製品は2004年まで製造されていました。
窯業系サイディング
窯業系とはセメントベースの材料のことで、防火構造の木造外壁としてよく使用されていました。タイル調の仕上げなど表面加工がされている製品が多いのでアスベストが使われている判断がつきにくい建材です。アスベストが含有されていた製品は2004年まで製造されていました。
フレキシブル板
セメントとアスベストを混ぜた板状のスレートボードです。防火・防音・防湿に優れていて加工もし易いことから、上から塗装をして使用されていました。アスベストが含有されていた製品は2004年まで製造されていました。
ケイ酸カルシウム板
アスベストと石灰質原料、及びケイ酸質原料を混ぜて板状に成形したもので、アスベストの含有率は5~25%です。耐火防湿の性質を持つことから、軒下(軒天)・台所や風呂場などの天井や壁に使用されていました。1994年までアスベスト含有のものが製造されていました。
岩綿吸音板
岩綿(ロックウール)に接着剤を混ぜて成形した板です。『ロックウール吸音天井板』や『ロックウール化粧吸音板』とも呼ばれていてアスベストの含有率は4%程でした。防音目的で使用されていました。アスベストを含有していた製品は1988年まで製造されていました。
気になるアスベストのチェック法
木造日本家屋はここをチェックする
屋根 | 屋根材には様々なものがありますが、住宅屋根よう化粧スレート(洋風柄)は特にチェックが必要。 |
軒下(軒天) | アスベスト含有のフレキシブル板。ケイ酸カルシウム板などがよく使われています。 |
外壁 | 窯業系サイディングなどにアスベストが含有されていることがあります。 |
天井 | 防音・耐火の目的でアスベスト含有建材が使われることがあります。 |
内壁 | アスベスト含有建材の使用は少ないのですが、見た目が紛らわしい建材もあります(寒冷地ではない壁にアスベストを使用している場合があります)。 |
床 | Pタイルはチェックしましょう。 |
台所 | 耐火目的で、アスベスト含有建材がよく使われる場所です。 |
風呂・トイレ | ここも耐火、防湿のために、給湯器まわり、壁、天井に使用されます。 |
鉄骨・鉄筋の建物はここをチェックする
鉄骨部(躯体) | 吹き付けアスベストや吹き付けロックウールなど、アスベスト含有のものは今すぐに除去が原則です。 |
屋根 | 波型スレートに注意。劣化によってアスベストの飛散が懸念される屋根材です。 |
天井 | マンションやオフィスなどでは、廊下やフロントなどの共有部部の天井に、耐火・防音目的でアスベストが吹き付けられていることがよくあります。 |
外壁 | 鉄骨・鉄筋造の外壁にアスベスト含有建材が使われている頻度はそれほど高くありませんが、使用されている場合は解体のコスト面にも留意しておく必要があります。 |
ベランダ | ベランダは火災のときに火の手が登っていきやすい場所なので、ベランダにはアスベスト含有建材が使われていることが多いです。 |
内壁 | 内壁にもアスベスト含有の建材が使われていることがあります。通常は塗装されるか、石膏ボードなどと張り合わせたり、クロス仕上げが施されていますので飛散の心配はありません。 |
給湯室 | 給湯室は火を使うため、耐火・耐熱素材として、アスベスト含有建材が使われている事が多い場所で。主にコンロや給湯器周りの天井や壁などに使用されています。 |
エレベーター・駐車場 | 駐車場では、鉄骨や天井に吹き付けアスベストが見受けられます。またエレベータの見えない部分にもアスベストが使用されています。マンションやビルなどで最重要点箇所といっても過言では無いほど最も注意してチェックすべき場所です。 |
ボイラー室 | ボイラーはお湯を沸かしたり、室温を集中管理するために設置されており、ビルや銭湯などではアスベストが使用されている規模も大きくなります。吹き付けアスベストが使用されている事が多く、煙を逃がす煙突にも含有建材が見られます。 |
学校ではここをチェックする
教室・廊下・階段 | 学生が長い時間過ごす教室や、行き来する廊下や階段には吸音用のアスベストが吹き付けられている事も多く、まず注目したいところです。フザケてホウキなどでつつく行為はアスベストを飛散させます。 |
体育館・武道館 | 体育館や武道館、部室などは学校の中で、アスベストを含有する吹き付け材が最も頻繁に使われている場所です。損傷しやすい状況での飛散が懸念されるため、早めの除去が必要です。 |
給食室 | 給食室は火を使うので、耐火の為に天井や壁にアスベストが吹き付けられている他、ガステーブルなどの調理器具にもアスベストが使われている場合があります。 |